若鮎の塩焼き
北大路魯山人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)活《いき》
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新緑の味覚は、若あゆの塩焼きからといってもよい。関西方面ではともかく、東京で活《いき》あゆの料理が自由に食べられるようになったのは、そう古いことではない。
しかも、ほんとうに天然の若あゆを使っているうちが東京広しといえども、果たして幾軒あるであろうか。あゆはまだまだ喧伝《けんでん》させてよいであろう。
今のあゆは江州のもので六月になると丹波のあゆが出る。江州は野洲川《やすがわ》の上流、および愛知川《えちがわ》の上流のもので、丹波は和知川のものがもっともよい。
天然産のあゆとはちょっと見ればすぐわかる。形からいえば天然のものは細く長く、養殖のものは太く短い。色は天然産のものは黄金色を豊かに持ち、殊に眼の下一、二分のところに黄色い線がくっきりと表われる。養殖のものは一体に青味が強い。その他なんといっても天然産のものは二、三寸のものにして、すでに、海から十何里急流を登って来ているものであるから、鰭《ひれ》の発達がちがって大きい。そして背鰭の先が黒く、尾鰭の先端に赤みが認めら
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