を自己一人にかち得ようとするようなケチな了見を有《も》っているものではありません。
 私は今のところごらんの程度にしか絵も書も出来ませず、なにほどの者でもありませんが、幸い絵が好き、書が好き、篆刻《てんこく》は固より古書画、骨董等、洋の東西を問わず古今に偏せず良いものを良しとなす貧弱ではありますが、好事家趣味家の一人だと思っているものです。
 こういう立場から遠慮なく申せば、現代陶工の所作にあきたらないものがありまして、先《ま》ず隗《かい》より始めよという訳で研究を進めている訳であります。況や私は食道楽、即《すなわ》ち美食研究という一事業がありますために、尚更食物の着物を攻究する責任がありますので、一層作陶に努力している次第です。
 どうか世間の多くの作陶家各位も商売敵のように思わないで、また邪魔な存在であるように考えられないで、胸襟を披《ひら》かれて同好同職の一人としてご交遊を願いたいと思うのです。
 丁度今回大阪でも近作陶鉢の会を催し、展観することになりましたから、具《つぶ》さにご覧を願いましてお心付きの点を披瀝《ひれき》して頂きたいと思うのであります。絵でも、陶器でも、その他いか
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