京都のごりの茶漬け
北大路魯山人

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)加茂《かも》
−−

 京都のごりは加茂《かも》川に多くいたが、今はよほど上流にさかのぼらないといないようである。桂《かつら》川では今でもたくさん獲れる。ごりは浅瀬《あさせ》の美しい、水の流れる河原に棲息《せいそく》する身長一寸ばかりの小ざかなである。
 ごりといっても分らない人は、はぜのような形のさかなと思えばいい。腹に鰭《ひれ》でできたような吸盤《きゅうばん》がついていて、早瀬《はやせ》に流されぬよう河底の石に吸いついている。
 ごりには大小さまざまの種類があるが、ここに登場するごりは小さなごりで、一寸以上に大きくならぬようである。それが証拠に、小さなくせに卵を持っている。身は短小なれど非常に美味いさかなである。
 京都の川肴《かわざかな》料理では、赤だし(味噌汁《みそしる》)椀に、七尾入れることを通例としている。こんな小さなものを七尾入れて、立派な京名物が出来るのだから、その美味《うま》さが想像できるだろう。従って値段も高い。たくさん獲《と》れないからである。とても、佃煮《つくだに》
次へ
全3ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北大路 魯山人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング