は、大方《おおかた》とびきり値段が高い。美味さの点をひと口にいえば、もちろん、養殖うなぎより天然うなぎの方が美味である。そのいわれは、季節、産地、河川によって生ずる。
「何月頃はどこそこの川のがよい」「何月頃はどこそこの海だ」というように、季節や場所によって、その美味《うま》さが説明される。このことはうなぎの住んでいる海底なり、餌《えさ》なりがかわるからなのであって、うなぎは絶えずカンをはたらかし、餌を追って移動しているようだ。
彼らの本能的な嗅覚《きゅうかく》は、常に好餌《こうじ》のある場所を嗅《か》ぎ当てる。好餌を発見すると、得たりとばかりごっそり移動し、食欲を満足させる。彼らが最も好む餌を充分に食っている時が、我々がうなぎを食って一番美味いと感ずる時で、この点はうなぎにかぎらず、あらゆるものについても同様に解明できよう。
例えば、つばめだってそうだ。世間では相当のインテリでさえ、つばめの移動を「寒さからのがれるために暖地へおもむく」と子どもたちに教えているようだが、それは少々誤りである。事実は、彼らの露命《ろめい》をつなぐ食糧、すなわち、昆虫がいなくなるからであって、つばめに
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