り、良否があるので、頭っからうなぎを「特別に美味《うま》いもの」と、決めてかかるのはどうだろうか。
 ここで私のいわんとする美味いうなぎとは、いわゆる良質うなぎを指すのである。「美味い」ということは、良質のものにのみいえることであって、食べてみて不味《まず》いうなぎをよいうなぎとはいわないだろう。その上、不味いものは栄養価も少ないし、食べても跳び上がるような心のよろこびを得ることができない。また、同じ種類のものでも、大きさや鮮度のいかんによって、美味さが異なるから、うなぎという名前だけでは、美味いとか栄養価があるとかいう標準にはなるまい。
 うなぎは匂《にお》いを嗅《か》いだだけでも飯《めし》が食えると下人《げにん》はいうくらいだから、なるほど、特に美味いものにはちがいない。人々の間では、「どこそこのうなぎがよい」というようなお国びいきもあるし、土地土地の自慢話も聞かされるが、東京の魚河岸《うおがし》、京阪《けいはん》の魚市場に代表的なものがある。素人《しろうと》ではうなぎの良否の判別は困難だが、うなぎ屋は商売柄よく知っているので、適当な相場がつけてある。従ってよいうなぎ、美味いうなぎ
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