表中猛とあるのは、猛毒で十グラムまでは致死的ならず、弱は弱毒で百グラムまでは致死的でなく、無は千グラムまでは致死的でないことを意味する。この毒力は一つの種類の河豚数十尾を検した中の最強の毒力です」
[#「河豚《ふぐ》毒力表」のキャプション付きの表(fig50001_01.png)入る]

 これによっても、ふぐの肉はいかなる種類のふぐでも無毒とされている。卵巣と肝臓、腸とを食わなければ無毒だといっている。私もその通りだと思う。要するに、猛毒といっても、肉にあるのではないから都合よくできていて、解明はすこぶる簡単だ。要は血液に遠ざかることである。わずかに滲《にじ》み出る血液くらいでは致死量に至らないようだ。むしろ醍醐味《だいごみ》となって、美味の働きをしているのかも知れない。いずれにしても、肉を生身《なまみ》で食うのが一番|美味《うま》いのだから、素人《しろうと》は皮だの腸だのは食わなくてもよい。しかし、頭肉、口唇《こうしん》、雄魚の白子《しらこ》は美味いから、ちりにして味わうべきだ。下関《しものせき》で鮮度の高い奴《やつ》を腸抜《わたぬ》きにして、飛行便で送ってくるから、これなら万《
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