塩昆布の茶漬け
北大路魯山人

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)駄目《だめ》
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 私の語るのは、ことわるまでもなく趣味の茶漬けで、安物の実用茶漬けではない。そのつもりで考えていただきたい。
 とは申しても、もともと昆布のことであるから、さして高価なものではない。ところで塩昆布だが、そこいらに売っているものでは、まず駄目《だめ》だ。所詮《しょせん》、昆布がよくて、これを煮る醤油《しょうゆ》がよくなくては駄目なので、この点、売りものの仕入れ品などは適当でない。
 この昆布は京都の松島屋、東京ならば築地魚河岸《つきじうおがし》の特産店、日本橋室町《にほんばしむろまち》の山城屋とかが取り扱っているものだ。つまり、だし昆布の上等でなくては駄目なのである。京都には、こういう店はいくらもある。
 醤油はヤマサくらいでよいだろう。また、塩味の好きな人は醤油に塩を加えるのもよかろう。塩を加えた昆布の佃煮《つくだに》は、塩でじゃきじゃきする。それまで煮つめるのが美味《おい》しい煮方である。しかし、直火《じかび》ではなく、湯煎《ゆせん》で煮つめるのである。一段と美味《うま
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