》く煮るのには、醤油一升を使うとしたら、その中に酒を三合ほど入れるがいい。酒のおかげで美味い塩昆布になる。煮た塩昆布をそのまま茶漬けにするのも、もとより異存はないが、山椒《さんしょう》の好きな人は、山椒の実の若くやわらかい時に、昆布といっしょに煮るといい。あるいは唐辛子《とうがらし》などを入れるのもいい。または関西ものの「ちりめんじゃこ」をいっしょに煮るのもいい。雑魚《ざこ》という原料の相違によって、東京のは例え昆布がよくても問題にならない。雑魚と昆布と煮たものは、さかなの味と植物の味の関係でなかなか美味い。ただし、この場合の雑魚は小さなのを選ぶべきである。要するに、前述のどれでもいいが、例のごとく飯《めし》の上にのせて、煎茶《せんちゃ》のよいのをかけて茶漬けとする。
茶漬けは、なにもかもが口に不味《まず》い時、例えば盛夏《せいか》のように食の進まぬ時、もっとも適当な美食として働く。塩昆布などで茶漬けをやる時は、沢庵《たくあん》漬けなど、むしろない方がいい。
底本:「魯山人の食卓」グルメ文庫、角川春樹事務所
2004(平成16)年10月18日第1刷発行
2008(平
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