鮎の名所
北大路魯山人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)河岸《かし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三日|経《た》って
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)たたき[#「たたき」に傍点]
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あゆをうまく食うには、あゆの成長と鮮度が大いに関係する。京阪や東京でいうと、七月がよい。地方によっては、早い遅いがある。子を持つ前の最大なのがよい。子を持ってからは二番目といってよい。見た目に見事なのを喜ぶ者もあるが、これは素人の話、東京でも盛んにあゆを賞味するので、河岸《かし》には日本全国からイヤというほど送られて来るが、東京であゆをうまく食おうとするのは土台無理な話で、かれこれいうのがおかしい。あゆの味は渓流激瀬で育った逸物を、なるべく早目に食うのでなければ問題にならない。岐阜のあゆも有名ながら、わたしの口にはあゆ中の最高とはいえず、況《いわん》や東京ではなおさらだめと知らなければならない。
京都保津川のもよいが、これは土地で生きていてこそいちばんである。東京であゆをうまく食うなどというのは断念した方がよい。
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