と食うところに意義があるのだろう。
 元来、どんな魚類であっても、皮と肉の中間に美味層を有するものである。それゆえ、皮を剥ぎ、骨を去ってしまっては、魚の持ち味は半減する。物によっては、全減《ぜんげん》するとまでいっても過言《かごん》ではなかろう。それはもとよりかつおだけにかぎったことではない。たいのあら煮が美味《うま》いというのも、実は皮も骨もいっしょに煮られているからなのである。
 昔は春先の初がつおを、やかましくいったが、今日では夏から秋にかけてのかつおが一番美味い。これは輸送、冷凍、冷蔵の便が発達したことによるものと思われる。大きさは五百|匁《もんめ》から一貫匁ぐらいまでを上々とする。



底本:「魯山人の食卓」グルメ文庫、角川春樹事務所
   2004(平成16)年10月18日第1刷発行
   2008(平成20)年4月18日第5刷発行
底本の親本:「魯山人著作集」五月書房
   1993(平成5)年発行
初出:「朝日新聞」
   1938(昭和13)年
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2009年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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