かそれとも住居か。地上を探して見るが何の紋様もない、土器の破片の外何も落ちて居ない。そこで右の入口から次の室へ這入つた。次の室もほゞ同形である。懐中電燈の光を中央部に向けた時僕は昂奮した。そこには長方形の石棺が置かれてある。して見ると此は古代の墓所であつたのだ。それに近づいてよく検査した時『是は意外な発見だ』と思つた。それには推古時代の物と推定し得る紋様がある。そして奇妙な唐草が棺の蓋に着いて居る。『どうしてこんな山中にこんな貴族的な棺があるのだらう』と思ひつゝその唐草を精密に見て居ると僕はふと奇妙な事を発見した。それはその石蓋の横面に当つて一つの石の割目が着いて居てそれから垂直に棺に線が這入つて居る。驚いた事には棺の横面は一枚の戸になつて居るのだ。変だなと思つてその戸をいぢつて見るが開かない。ふと偶然に手が蓋の隅にある一つの花の彫物にさはつた。するとその花ががた/\動くのである。僕が指でそれをぐつと推した時不思議や棺の横はがたんと下へ下りた。そして覗き込むと棺の下は縦坑になつて居るのであつた。その中から微かに灯の光が反射する。僕はぎよつとした。『この中に人間が居る。』と思ふと同時に忽
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