でその列石を尾けてこの谷を下り始めた。石は或は地に埋没し或は木にかくれつゝ、谷に沿うていくらでも続いて行く。およそ一里許りも行つたかと思ふ中にいつしか見失つてしまつた。そしてぼんやりして向ふを見るとすこし上つた所に変な石崖が見える。確に人工の物である。僕はすぐそこまで上つて見た。そしてよく調べると、その石崖の一寸一目で分明らない部分に一つの小さな入口がある。そして扉が開いて居る。それは諸国にある穴居の遺蹟によく似通つた物である。僕の好奇心は湧いて来た。すぐその小門から中へと這入つて行つた。這入つて暫らくは、道は水平で這はなければならぬ程狭い所もあり、中途でずつと広くなつて、中腰で立つて歩ける様になると共に傾斜し始めた。そして所々で角になつて居る。よく考へると道は螺線状に這入つて行くらしいのだ。懐中電燈の光でずん/\と伝つて行く。

(四) 物をも言はず捕縛

 やがて余程這入つたかと思ふと道が尽きて大きな石室へ出た。懐中電燈の光で照して見ると、此処はすつかり石で張つた高さ一間半四方位の室で、内部は空虚であり右手に次の室に通ずる口がある。一体何の為に地下にかゝる室があるのだらう。古代の墓
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