抱いて行つて俥を呼んだ。そして富坂まで走らせた。家へ帰ると戸をすつかり閉ざした。電燈の光でよく見れば実に美しい少年だ。俺は用意した鋭利な大ナイフを取り出して後頭部を力を籠めてグサと突刺した。今まで眠つて居た少年の眼がかつと大きく開いた。やがてその黒い瞳孔に光がなくなり、さつと顔が青くなつた。俺は真青になつた少年を抱き上げて床下の貯蔵室へ入れた。
(七)
俺は出来得る限り細かくこの少年を食つてしまはうと決心した。そこで一のプログラムを定めた。俺はそれから諸肉片を順々に焼きながら脳味噌も頬ペたも舌も鼻もすつかり食ひ尽した。その美味なる事は俺を狂せしめた。殊に脳味噌の味は摩訶不思議であつた。そして飽満の眠りに就いた翌朝九時頃眼が覚めると又たらふく腹につめ込んだ。
あゝ次の日こそは恐ろしい夜であつた。俺が死を決した動機がその夜に起つたのだ。実に世にも残酷な夜であつた。その夜野獣の様な眼を輝かして床下へ下りて行つた俺は、今夜は手と足との番だと思つた。鋸を手にして何れから先に切らうかと暫らく突つ立つて居た。ふと少年の左の足を引いた。其拍子に、少年の身体は俯向きになつた。その右足の裏を眺め
前へ
次へ
全19ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
村山 槐多 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング