がたり》に現れたる、私の雷観」というところであろうか。しかし私の考えは、間違っていたことに、気がついた。

      全世界の雷研究に及ぶ

 抱きつかれた瞬間、心臓は恐怖とアレの二重働きをせず、恐怖はどこかへ行って、もっぱらアレに一重働きをするから、決して、心臓麻痺の心配は要《い》らねえということに、気がついたからであった。そこで、私自身の体験へ、移ろう……。と、言ったところで、誰も私なんぞに、抱きついた女があったわけではない。
 選《よ》りに選って私ごときクマソタケル然とした男に抱きつく女なぞのあろうはずもないことであるが、今から一昔の前、西班牙《エスパニア》の公使が、フランコ政権を代表して、日本に駐※[#「答+りっとう」、第4水準2−3−29]《ちゅうさつ》していた時分であった。この公使館に、頗《すこぶ》る優美な女がいた。明眸皓歯《めいぼうこうし》、風姿|楚々《そそ》たる、二十三、四の独身の秘書《ステノ》であったが、私は、この|お嬢さん《セニョリータ》に、ゾッコン上せあがってしまった。
 瞳の黒い、笑うと可愛《かわい》い靨《えくぼ》を、にいっと刻むなんてなことになってくると、雷
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