ていた原因が、今やっと腑《ふ》に落ちてきたのです。
 東|欧羅巴《ヨーロッパ》のユーゴ・スラヴィアという、日本にも馴染《なじみ》のない国の建築だったのです。
 さて、腹も張って他愛もない雑談を交えているうちに、昨夜|藪蚊《やぶか》に食われて碌々《ろくろく》眠ってない顔に、眩《まぶ》しい朝暾《あさひ》が当ってくると、堪《たま》らなく眠くなってきて……娘たちにも私の疲れているのが、わかるのでしょう、一眠りして行けと、勧めてくれるのです。
「父が、いってましたわ……途中で道が分れてますから、後で誰かにお送りさせるって……わかるところまでわたしたち、連れてって上げてもいいですわ、……一眠りしていらっしゃい!」
 初めての家で、そんな迷惑までかけては済まないと思いましたけれど、こう眠くてはヤリキレマセン。ついでにこれも、好意を受けることにしました。
 姉娘の導いてくれたのは、スグそこの階段を上った、二階の取っ付き部屋でした。緋《ひ》の絨毯《じゅうたん》を敷き詰めた洋間でありながら、ブェランダ紛《まが》いの広い縁側がついて、明け放した大きな硝子《ガラス》戸からは海や谷底を見下ろして、さっきよりもっ
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