制止して下さらなかったら、僕は噛《か》み付かれたか知れませんね」
と、妹娘の脚の下に、長々と蹲《うずくま》っている巨大な犬を眺めながら、私は今更のように竦然《ぞっ》としました。
「どこで、生まれたんですか? 僕も、こういう奴を飼いたいな……こんな猛烈な奴を、まだ見たことがない」
私も、犬は嫌いではありません。家にも、シェパードが二匹います。世界で一番巨大な犬は、セントバーナードとグレートデーンだといわれています。セントバーナードは見たことがありませんが、この牛犬《クラブニ・ハウ》はまず、グレートデーンをもう一回り大きくして、逞《たくま》しくしたと思えば間違いありません。
「オシエックというところで、生まれましたの、クロアティアの」
「クロアティア?」
「ええ、クロアティアの……ユーゴ・スラヴィアの……」
という返事です。
「欧州のユーゴ・スラヴィア……? へえ! そんな遠いところから、お買いになったんですか?」
「買ったんではありませんの、持って来たんですわ。……わたしたち帰る時、一緒に連れて来ましたの、ですからもうお爺《じい》さんですわ……」
「じゃ、貴方《あなた》がたは、ユー
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