ぶ》のごとくに立ち列《つら》なり、東北方、山襞《やまひだ》の多い鬱然《うつぜん》たる樹木の山のみが、その裾《すそ》を一際近くこちらに曳《ひ》いている。
 陽《ひ》はその中腹あたりの岩肌をキラキラと輝かせているが、天地万物|寂《せき》としてしかも陽だけが煦々《くく》として、なごやかにこの野原に遊んでいる。
 向うの山の頂に美しい白雲が泛《うか》んで、しかもその白雲の翳《かげ》を落としているあたり、ヒョロ高い松が二、三本|聳《そび》えて、その根元に墓が二つ……。
 あすこに、美しい娘たちが眠っているのかと思うと……青年ももはや亡く、ただ不思議な縁で、何のゆかりもない私が今、その墓|詣《まい》りに来ているのかと思うと、万感こもごもわき起ってくる。
「あ、旦那様、足許《あしもと》がお危のうごぜえます……」
「貴方《あなた》が、あのお嬢さんたちのお墓を彫ったんだそうだね?」
「へえ、左様でごぜえます。手前が……」
「お嬢さんたちは、生前ここが大好きだったから、それでここへ葬ったとか……」
「旦那様は、大層よう御存知で……」
「ここからあすこまで、どのくらいあるのかね?」
「近くに見えとるでやすが
前へ 次へ
全199ページ中196ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
橘 外男 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング