》え立ち、全山ことごとく樹木|鬱蒼《うっそう》として昼なお暗く、夏でも鳥肌立って、寒けを感ずるであろうと思われる。
「ほら! あすこでごぜえます……あすこであの旦那《だんな》様は、休んでいらっしゃったでごぜえます」
 不気味そうに藤どんなる藤五郎氏の指さすところに、なるほど一際こんもりとした、老樹が二本|縺《もつ》れ合っている。
「うとうとしていられると、ちょうどあの木の下から、お嬢様がお二人で、降りていらしたでごぜえます」
 もはや噂《うわさ》はこの辺の、静かな山村一円にも拡がっているのであろう。
 なむまいだ、なむまいだ、と六蔵が眼を閉じて、また念仏を唱える。いよいよ問題の老樹の下に立つ。
「じゃ、こんだア、こっちの方へ登りますで……大分狭くなってめえりますで、足許《あしもと》に気イお付けなすって……」
 詳しくいえば、水の尾村|字亀瀬《あざきせ》というところだそうである。姉妹《きょうだい》二人は墓からこの道を伝わって、さっきの木の下へ出た、と連中はいうのであるが、これは道とは名のみ! 幅一尺もあるかないかの小径《こみち》に過ぎぬ。それが幾年にも人の通ったけはいもなく、両側から丈《
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