て、野菜もここいらの百姓と同じようなものを、何でもやり出したでがす。それやこれやで、大分初めの予定と狂いができて、どうせ儲《もう》かんねえ普通の百姓をするなら慣れぬところで苦労するより、いくら貧乏でも生まれ故郷さ帰《けえ》った方がいいと、平戸へ帰るものも出やしたし、一人欠け二人欠け、今じゃさっき申上げたように十四軒だけ……。石橋の旦那もお亡くなりなすったし、みんなで心を合わせて、旦那のお気持に酬《むく》いにゃなんねえと、必死にやってるでがす」
 ということであった。
「一体石橋さんという人は、どういう方ですか?」
 と聞いてみたら、
「そうでやすな、一口にいったら……途方もなく肚《はら》の大《で》かい……日本人にゃ珍しい肚の大きな方でござんすな。それに親切な……小さい時から外国で苦労して、大金持になった方だけあって、考えなさることが日本人にゃ思いも付かねえような、大けえお方でやすな。
 これはと思ったら、思い切った金をかけて、物惜しみなさらねえ……御自分も苦労なすった方でやすから、憐《あわ》れみが深くて、実にようでけたお方でやす。あの方のことを悪くいうもんなんぞ、一人もねえでがす」

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