》られた、夏草茂る盆地……ゆるやかな一面の大野原……しかもしかも、その野草の中ほど小高い丘の上に二、三本の松の木がヒョロヒョロと聳《そび》えて、その根元にハッキリと並んだ二つの墓……。
 もう疑いはありません、ジーナとスパセニアの墓です。そしてそしてあの墓の下に、額《ひたい》を撃たれて糜爛《びらん》したジーナと、スパセニアの亡骸《むくろ》が私を恨《うら》んで、横たわっているかと思うと、見えも恥もなく、総毛だってガタガタと私は、震え出しました。
 もう間違いはなく、あの二人は亡霊だったのです。今の世の中にあるもないも何もあったものではありません。私が訪ねて来たことを知って、水の尾村へ行くことを知って、墓から抜け出して、この態笹の道を通ってあの栃《とち》と※[#「木+無」、第3水準1−86−12]《ぶな》の木陰から、姿を現したものに違いありません。
 しかも、そうとは知らず、あの淋《さび》しい薄暗い山道を、二時間も三時間も連れ立って……あの青白い顔、淋しいほほえみ……また明日《あした》お迎えに……上がりますわ……。
 その瞬間、私の思い出したのは、あの神保町《じんぼうちょう》の人混《ひとご
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