茅《ちがや》なぞの胸まで掩《おお》うた細い山道にかかります。小暗い繁《しげ》みも抜けて、つづら折りの第一の山道にさしかかります。
 この辺では、この山を矢上《やがみ》山と呼んでると、一人が教えてくれました。一里ばかりもその山を登ると、その奥がいくらかだらだら下りになって、道は山の中腹をいく曲りもいく曲りも……右手に深い谷を隔てて、層々として深い山脈《やまなみ》が走っています。渓谷を越えて、また二里ばかりの深い山道……いよいよ東水の尾へ抜ける最後の山の背梁《はいりょう》になりますが、足の弱い女連れ、殊《こと》に昨夜《ゆうべ》は疲れて薄暗い夕方のせいか、心気|朦朧《もうろう》として、随分手間取った道も今日は男ばかりの、しかも元気一杯に、朝の十一時頃にはもうその山の背梁も越え終って、いよいよ赤名山を左手に眺《なが》め始めました。
 しかも、半信半疑で、今に現れるか、今にその辺の木陰から、二人が迎えに出るか? と胸を躍らせていたにもかかわらず、到頭どこにも姿は見当りません。してみると……してみると……やっぱり昨日の二人は……? と疑念が胸に忍び寄ってきた時分、
「旦那《だんな》様来やしたぜ、い
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