い込んで、お前がいるからあの方は来て下さらないんだわ、いいえ姉さん、貴方《あなた》がいるからよ、といい争いが昂《こう》じて、勝気な妹が、到頭姉に拳銃《ピストル》を向けるようなことになったのではなかろうか? と、この邸《やしき》の馬丁をしていた福次郎が、この村へ来た時に、知り人に話していたというのです。そして赫《か》っとした弾みに、姉に発射はしたものの、やっぱり大学生からは何の音沙汰《おとさた》もなく、父も姉もいなくなった淋《さび》しさに堪え切れずに、その勝気な妹も湖水に身を投げて死んでしまったのではなかろうか? という福次郎の話だったというのです。
 しかし福次郎とても、家が焼けてしまってからは、農場の農夫や、水番の六蔵ともども大野木村の開拓民たちのところへ行って、滅多に山へ上ることもないのですから、詳しいことを知ろうはずもありません。ただ、多分そうであろうという推察だけなのですが、ここにその推察を裏書きするものは、さっきもいったとおりに……。

      十二

「そ、そこんところは藤《とう》どん、わっしから且那に申上げよう。わっしは、現にこの眼でお嬢様たちの死体の上がったところを
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