宇部とは遠いのう! お父さんひとりスッポカシテ、そんなところへ行かんだっていいじゃないか! お母さんだって、お前ひとりやれば心配されるだろうし……」
「もう、僕だって子供じゃなし……お母様は、あんまりいつまでも、子供扱いされるんで、困るんです! お父様は、わかって下さるけれど……」
「お前が大切《だいじ》だから、アレもつい、度を過ごすのだろう。ま、お父さんは、もう一人前の人間と思うとるから、あまりこまかいこともいわんようにしとる」
 行ってよろしいともいわず、行ってはならぬともいわず、有耶無耶《うやむや》のうちに到頭無理やりに父の承諾を得た時は、どんなに躍り上がったか知れません。まだ煮え切らずに、何も夜になるところを眼がけて行かなくともいいじゃないか! 明日《あした》の朝行けばいいじゃないか! と止める袖《そで》をふり払って私は、父の気の変らぬうちに飛び出してしまいましたが、考えてみればあれからちょうど二年と三カ月……、ジーナもスパセニアも、どんなに待って待って待ち抜いていたかと思えば、逢《あ》わぬ先からもう心は、遠く南九州の空へ飛んでいました。
 長崎急行に乗り換えて、宇部も宇田中も
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