! 暴虐の限りを尽し、無実の罪を被《き》せおって! 人に怨みがあるものかないものか! 見よ、見よ、ここ三代が間に汝《なんじ》の屋敷にぺんぺん草を生やしてくれん!』『ええ、喧《やかま》しいやい、ソレ、もっと薪を焼《く》べろ!』と到頭焼き殺してしまったんだよ」
幼い私は溜息《ためいき》をつきながら祖母を見上げていました。
「ところがどうだろう、人の一念というものは恐ろしいもんでね、その真っ黒に燃え切って、坊さんの身体がもういいだろうと薪を取り除《の》けた途端、大膳めがけて二足三足歩き出したというんだよ。見物人が顔色変えてワァッと逃げ出す。歩き出したその坊さんの身体が、途端に何かに躓《つまず》いて、バタッと倒れて……倒れると同時に、土煙を挙げて粉々の灰になってしまったんだよ。だからお祖母《ばあ》さんがいつでも言ってるだろう。夕方誰も通らぬ時に、あんなところを一人で歩いていると、今でもその坊さんが怨《うら》めしそうな顔をして、芒《すすき》や茅《かや》の向うに、朦朧《もうろう》と映ってくるんだよ。細い声を出して、モシモシこの辺にお高という腰元の働いている棚田という家はありませんかい?」
と私
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