あって松園さんもやってますが、色々の観方や行き方があるものです。これは謡曲の方でちょっと余談になりますが私が景年さんの御稽古をしていた時に、景年さんが謡曲の文章で風景を讃美したりする美文の所にくると「先生もう一度謡ってください」と黙ってそれを傾聴するのです。謡い了ると又同じ所を「もう一度お願いします」と言って何度も謡わせまして傾聴して考えていました。これは景年さんが謡曲の謡い方を稽古するのでなくって、その所を絵にする為で、それが景年さんの絵に時々なったのでした。ここで面白いのは景年さんが只その文章の美文だけを読んで絵にするのではなくって、謡という芸になったものを狙ったので、謡曲がその風景を美化して出す、その味を掴んで画にしようとした事です。景年さんの絵については色々と観方もありますが、とにかくこの謡からの取材の仕方が面白いと思われます。それと多少行き方が違うがお能の面を研究して絵画に使う人がある。
 松園さんが未だ無鑑査にならない、前の頃だと記憶していますが、出品画などには随分婦人の顔について研究していたらしいので、お能の面についても色々と訊ねられたり又自身で大分研究していた様子でした
前へ 次へ
全6ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
金剛 巌 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング