能面と松園さんの絵
金剛巌
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鈍勝《どんか》ち
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き](昭和十七年)
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二十年! もっと以前になりますか、私が松園さんを御稽古していたのは。近頃私は素人には稽古をしないので、松園さんの直接の御稽古は門中の廣田が行っています。近頃の謡もよく存じてますが、素質の良い方ではあるし、熱心で、なかなか上手です。私が松園さんを御稽古したり、又その方面から観まして感じた事は、ああいう風に今日画壇で女性として第一流の画家になるには並大抵の苦労ではなかったであろうと思う事です。それは謡曲を稽古していましても、素質がいいのですから直ぐ憶えて又解っていられるのですが、早呑込みを仕無いで得心の行くところまで訊きもし、又稽古をする方です。芸能というものは種別は変っても、その心掛けなり、態度なりはその人はその人としての同じものがあるから、その推定から松園さんは絵にも同じものがあるであろうと想っています。
世間には「鈍勝《どんか》ち」という事がある。才智が無くって愚鈍な者が一生
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