山、右に山王帽子、太郎、真名子、男体の諸山が控え、笠と三ヶ峰との間には燧岳の双尖が天を劃している。果して平滝からの道はこの鞍部へ上って、更に東方へ延びている。この道をたどって行けば皇海山の北面にそそり立つ懸崖の下に出られそうであったが、時間が惜しいので自分らは行って見なかった。
切明けは幅九尺以上もあって、鞍部からは皇海山の西峰へ一直線に続いている。急傾斜の上に霜柱が頽《くず》れて滑るために、邪魔はないがやはり時間はかかる。わずかに三百米足らずの登りに五十五分を費し、一時三十五分皇海山の西峰に達した。西峰とはいうものの正しくは頂上西端の一隆起に過ぎないのである。黒木が繁っているので眺望はない。切明けは頂上直下で終って、それからは踏まれた路跡がある。東に向って少し下ったかと思うとまた上りとなって、二時絶頂の三角点に着いた。この間に一隆起があったように思うが、遠望には目立たぬようである。三角点の附近は木を伐り払ってあるので、四方の開豁なる眺望が得られる。南を望むと鋸山から鳶岩《とんびいわ》を連ぬる支山脈が近く脚下に横たわり、鳶岩の右の肩には上州峠の頂上にある鉄索の小屋まで見えている。次で
前へ
次へ
全26ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木暮 理太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング