ように思ったので、下草の枯れた林の中を濡れながら登って頂上の笹原に出た。そこには広い上に笹が深いので容易に路が見当らない。二人で三十分もかかってようやくそれらしいものを探しあてる。下ってまた登り、一小隆起を超《こ》えて、小高い山の右側を廻り、ちょっとした鞍部に出る。ここまではとにかく地図の点線の道とほぼ一致した処をたどって来たに相違ないと思う。地図ではここから道が尾根の北側を廻って、今までと大差ない路跡がついている。もっとも樺や笹がかなり生えているので歩行を妨げられるが、藪の中よりはずっと楽である。しかもほとんど等高線に沿うた路で、きわめて緩徐な登りであるから、歩いていてもそれと認められないほどである。始《はじめ》はこの道も地図に表わせない程度に右に廻ってから、尾根に出るものと思っていたが、行けども行けども同じような路の連続で、ただ悪いことには笹が追々にひどくなって来る。ここに至て地図の道とは全然違っていることを確めたものの、もうそのまま前進するより外に仕方がない。とかくして路は岩石の露出したかなりの水量ある沢に突当って全く絶えてしまった。あたりに木を伐った痕《あと》がある。沢を横切っ
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