江はしまいにいった。あたしもあなたを本当に気の毒に思っていてよ、急にそんな事いい出したの判るわ、だけど、それはあなたの本心じゃないんじゃない? あなたは未だ未だ将来を考えてるわ、あたしと結婚したくないんだって、そのためだわ。久能は青江のいう通りだ。こんな事で死んで了っては余りに他愛なさすぎる、俺には逞しい慾望がない訳では決してないのだ、と思いながら、どうしても自殺する決心だときかなかった。すると青江は、きっとあたしを脅かして何かいわせたいためなんでしょ? あたしに罠をかけてるんでしょ? そんなことされちゃ、あたしは意地になるだけだわ、いいえ、あたしにうしろ昏いとこあるからじゃない、意地でなら、一緒に死んであげてよ、あたしが潔白なことあなたに見せるためなら、だけど、あたし、それじゃあなたの他人になって死ぬのね、といった。久能は尚、説いて、どうせ人間の口でいう事なんか信じられない。あなたがその意地で、他人になって死んだら僕はうれしいんだ、二人が苦しみ出して絶命する迄に、きっと僕はどうしてもあなたを信じないではいられない瞬間にぶつかると思っているんだよ、僕を本当に愛しているのだったらこんな無
前へ
次へ
全33ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊田 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング