したんです。」は底本では「拒絶したんです」]そういう事件に関しては医者の権限外であるといって、問題の渦中に巻き込まれたくなかったのですね、僕の精神は緊張の結果、ひどく弱っていたので、僕自身もこの問題に深入りしまいと決心したのです、悪い女には却って魅力があるような気がしましてね、彼女が医者に行く前も後も何やら晴々していて、僕に親切にしている、恐らく罪の苛責というものを感じないでいる女の魅力‥‥僕は最初その女を愛していなかったのに、今では夢中になっているのです、と話すと、菊崎は憐れみの眼で久能を見、それは変ですね、あくまでも、非常な例外としては浴場や、トアレットで感染する場合があるそうですが、全然潔癖に通したのでない以上信じられない事ですねと、無遠慮にいったので、久能は再び疑いを新らしくする機会を与えられて、今度こそ青江に白状させないでは置かないと決心し、それに又自分は何故この様に真相を知りたがっているのだろう、大人というものは誰でも自分の知ることに限りがあるのを知っている様子なのにでなければ単に青江が自分を裏切ったのだと信じ切ってしまえば万事が終るではないか、自分では青江に本当の愛を誓わ
前へ
次へ
全33ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊田 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング