た訳でないんですよ、自分でも原因が判らなくって、弱っているんですがね、といったがその言葉には少しも力がなく、だんだん追究されると、青江に持っている血のような疑いを口に出したくなって来るのだった。それでもさすがに恥じているので曖昧な返事をしていると菊崎は、じゃ素人ですね、と久能の避けているところに触れて来て、終には久能もかくしきれず、昨年の秋の末頃、僕はある純潔な娘と恋愛に落ちたのですが、ところが今年の二月頃、僕は突然異常を感じて、この病院に通い始めたんですと告白すると菊崎は眉を寄せて、それであなたに覚えがあるんですか、ときき、久能は面を伏せていい難そうに、いや、全然、それで僕は勿論、彼女に詰問したんですが彼女は頑強に潔白を主張するのですよ。僕はありとあらゆる手段を尽して彼女に泥を吐かせようと試みたのですが効目がなく、現に彼女自身は健康だといい張るのです。それではと僕は彼女をある病院に伴れて行きました。併し彼女は顔色一つ変えないで医者の前に立ってました。すると医者は診察する前に、僕を呼んで、何故診察を受けに来たかときくので僕が正直に事情を話すと、その博士は診断を拒絶したんです。[#「拒絶
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