じ》の台どころを嗅ぎ当てていたのかと不思議に思った。
 たまたま、鼻唄《はなうた》を歌って通るものに会うと、その声からして死んだものらの腐った肉のにおいが聴かれるようだ。
 僕は、――たとえば、伊邪那岐《いざなぎ》の尊《みこと》となって――死人のにおいがする薄暗い地獄の勝手口まで、女を追っているような気がして、家に帰った。
 時計を見ると、もう、十時半だ。しかし、まだ暑いので、褥《とこ》を取る気にはならない。仰向けに倒れて力抜けがした全身をぐッたり、その手足を延ばした。
 そこへ何物か表から飛んで来て、裏窓の壁に当ってはね返り、ごろごろとはしご段を転げ落ちた。迷い鳥にしてはあまりに無謀過ぎ、あまりに重みがあり過ぎたようだ。
 ぎょッとしたが、僕はすぐおもて窓をあけ、
「………」誰れだ? と、いつものような大きな声を出そうとしたら、下の方から、
「静かに静かに」と、声ではなく、ただ制する手ぶりをした女が見える。吉弥だ。
 僕はすぐ二階をおりて外へ出た。
「………」まだ物を言わなかった。
「びッくりして?」まず、平生通りの調子でこだわりのない声を出したかの女の酔った様子が、なよなよした優し
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