うので――こゝへ來ると、大西郷の反亂と小供の惡戯とは、何の違つたことがあらう。プラトーン以來、哲學者のたよりとして來た知力も、また運命の杖に過ぎない[#「プラトーン以來」〜「運命の杖に過ぎない」に傍点]。暗黒の中から自分を探つて行くのである。隆盛が『盲人の手引きだ』と云つた評言は、某政治家にばかり當て填つて居るのではない。
 僕は、曾て、身づから安心が出來ないので、いツそこの苦悶を傳へて、世の惱んで居る人々を啓發し、同情相憐む間に慰藉と救濟との道を開くつもりで、傳道者にならうと决心して居たことがある。然し、耶蘇教の神觀に滿足が出來ないで、之を放棄してから、まだ詩に安立して居たわけでなかつたので、哲學に自分の救ひを求めた。その時、カントを讀めないながら字引の案内でのぞいて見たが、その組織が――大きいと云へば、大きいのだらうが――如何にも繁雜で、假定が多いので、矢張滿足が出來なかつた。ミルトンの詩は[#「ミルトンの詩は」に傍点]、譬へや引用が五行も六行も重なつて來て、それから云ひ表はさうとする感想が躍り出て來るので、窮屈なのは窮屈だが、力と威嚴のあるので、當時面白く讀めた,然し、カントの哲
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