時――最も原始的本能を以つて、靈的交通をして居る時。
 婦人には一種の靈光があつて、男子は知の世界に下つて之を忘れて居るが、再び之に接合しようとすると、神秘の門をくゞらなければならない[#「婦人には」〜「くゞらなければならない」に傍点],婦人は卑怯であるから、一歩も之を出て來ることが出來ないのである。男子が知の形式を破つて、その門を敲けば、婦人は直ぐ、自分に送られた靈だと知つて、開けて呉れるのである。婦人を惡口する男子は、それに接吻するに最も善い高地を知らないのだ[#「婦人を惡口する男子は、それに接吻するに最も善い高地を知らないのだ」に傍点]。婦人は、父を恐れない小兒と同樣、神の前では無邪氣に笑つて居る。渠等の不斷の樣子を見れば、縫ひ物や編み物をしたり、髮を解いたり、結つたりして居るので、それに智識上の事を話しても分らない。婦人を見舞ひに行くのは、美しい花を見に行くのと同じである[#「婦人を見舞ひに行くのは、美しい花を見に行くのと同じである」に白丸傍点]。然し、愛には理解は入らない[#「然し、愛には理解は入らない」に傍点]、婦人は無意識で、運命のあてがふ結婚を待つて居るのだ[#「婦人は
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