したので、そんなことはどこでも云ふから珍らしいことはないと笑つたが、如何にも人物が温厚なので、時々頼れて日本の事を演説してやつたさうだ。暫く經《た》つと、こゝへ紹介をして呉れた友人から手紙が來て、讀んで見ると、お前は同派に改宗する見込みがあるさうだが、そんなつもりで紹介したのではないと書いてあるので、これは不思議だ、自分もそんなつもりではないのにと思つて、出した返事が面白い――温厚な老人の頼みがあるので、時々日本の事を演説などはして居るが、先づ當分は改宗の見込みはないと思つて呉れろ。『宗教は偉人の形骸である[#「宗教は偉人の形骸である」に白丸傍点]』とカライルは云つたが、この樣なあはれな状態に墮落したら、他の宗派と同樣、徒らに信者の數をむさぼる餓鬼道である。
これから、スヰデンボルグ、エメルソン、メーテルリンク三者の愛論を述べて、三者の立ち塲と特色とを比較し、それから自説を述べることにしよう。
(七) 三者の愛論
今、スヰデンボルグ、エメルソン並にメーテルリンクの愛に對する論を比較して見ると、三者の特色もよく分るし、また後に云ふ僕の所論が渠等とどんなに異同があるかも明かになる
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