病者で、『色も香もない單調な生活に倦み果て』たあげくが、孟夏の狂熱に唆かされて、その身を『破廉耻至極な僕』のジヤンに任せた。いよ/\家を逃亡することになり、下僕は令孃にその父の金を盜ませる。令孃はまた寵愛の鳥を連れて行かうとするので、下僕は之を爼の上で殺してしまう。令孃は之を怒つて、下僕を呪ふ。そのうち、父伯爵が歸つて來たので、下僕は令孃に剃刀を與へて死ねといふ。やがてベルが鳴ると、下僕はもとの通りのジヤンになつて、令孃ユリエは自殺する。作者自身は之を『自然主義の悲劇』と稱したさうだが、この終末を以つて、人生の悲痛を解决したつもりでもなく、また觀客に解脱の念を與えられるものでもなからうから[#「この終末を以つて」〜「なからうから」に傍点]、僕はそこが氣に入つたのである[#「僕はそこが氣に入つたのである」に白丸傍点]。(その後、同人の悲劇『父』を讀んだが、同じ種類のものだ。)材料が卑近なのは、その作者の力量に由つて如何ともなる,メーテルリンクの如きも、その『日常生活の悲素』といふ論文に於て、『無限なる物の神秘的吟誦、靈と神との前兆的無言、久遠が地平線上の私語、運命即ち宿命にして、われ等が
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