それで、美の状態を三つに分けた――單に自然の格好[#「自然の格好」に白丸傍点]を見るのも樂みだが、一段進めば、男子的美[#「男子的美」に白丸傍点]、乃ち、人間の意志と結合して來た時の美がある。たとへば、レオニダスとその三百の兵士が、國家の犧牲となつて、サーモピレーの山間に倒れて居るところを、太陽と月とがそれ/″\照らした時,また、コロムバスの船が、萬難を冐して、西印度の一島に近くと、岸には、之を見た土人等が、甘蔗葺きの小屋から、ばら/\と逃げて行くのが見える、うしろには洋々たる大海を控へ、前には紫色の連山が横はる,すべて斯ういふ時には、この活畫から人間を離して見ることは出來ない。意志を以て立つ天才の周圍には、人物でも、學説でも、時勢でも、自然でも、すべてその天才と融和してしまうのである[#「意志を以て」〜「融和してしまうのである」に傍点]、美の今一つの状態は、知力の目的[#「知力の目的」に白丸傍点]となつた時で――知力は好き嫌ひの感情をまじへないで、事物の絶對秩序、絶對の理法を求めて行く。意志に伴ふ美は求めずして來たる實行美[#「實行美」に白丸傍点]、善である,知力がわざ/\求めて
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