あつてはならない」に傍点]。かういふ僞物を備へなければならない文藝は、わざ/\自分の品位を下だして、或世俗的思想と觀念との奴隷になつて居るのである。
 神秘界の表象には、今まで云つて來たので分る通り目的はない、從つて主義や寓意やのあるべき筈もない。天才[#「天才」に白三角傍点]は自分の餌ばとする悲痛の活動を直寫するものである[#「は自分の餌ばとする悲痛の活動を直寫するものである」に白丸傍点]。自然即心靈だから、僕の表象的刹那觀は即ち寫實主義である[#「自然即心靈だから、僕の表象的刹那觀は即ち寫實主義である」に傍点],而も、それがまた一刹那に覺醒した宇宙を寫實するのであるから、犬才ならば犬才だけの境界、蛇才ならば蛇才だけの範圍に短縮してしまう。之が爲めに寓意を用ゐたり、主義を入れたり、目的を與へたりしなければならなくなるのだ。もう、世の概念又は觀念その物を活物かと思ひ違へて歌ふ樣なものになつては、在來の短歌が花鳥風月を花鳥風月と詠んだり、タムソンの英詩が自然を官能的に樂んだりしたと同樣、如何に文句が巧みで、如何に言ひ廻しが上手であつても、かの寓意詩や主義小説よりも更らに墮落したものと云は
前へ 次へ
全161ページ中128ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岩野 泡鳴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング