のである」に白丸傍点]。
自國の敗亡に臨んで、恬として之を返り見ないものゝ樣に、敵將ナポレオンと相見へて快談した、ゲーテの意氣は諸君も知つて居られよう。これは乃ち獨逸の文藝が、佛蘭西の思想界にも權力を及ぼした象徴である。また、かのペルシヤの大軍を撃退した跡で、アテーナイの文明が頓に勃興したが、これはその以前から見えて居たので、アテーナイ人が敵の大軍をサーモピレーに控へながらも、なほ且、終夜|抃舞《べんぶ》[#入力者注(5)][#入力者注(14)]歡樂に耽り、その宗教上の祭禮に熱狂する程の感興があつたからである。一國として、その根本的活機を握つて居る人物がなければ、その國家は既に滅亡したと同前である[#「一國として」〜「同前である」に傍点]。現今の日本の樣に、戰爭でなければ金錢、商業でなければ賄賂、成功でなければ詐僞,懷疑もない、煩悶もない、戀愛もない、失望もない、情もなければ涙もない有樣では、たゞ得意とから意張りばかり増長して、各個人によつて支へらるゝ國家の生命は空々寂々のものになつてしまうだらう。
第一、今回の日露戰爭に勝利を得た所以[#「日露戰爭に勝利を得た所以」に白三角傍点]
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