有島武郎氏とは、郷里が同じいので、ときどき原稿もかいてもらった。「宣言」や「描かれたる花」その他を記憶している。氏は内面的には強い人であったようだが、人から頼まれれば断わりきれないところがあった。私に紹介されたある社会主義者のために、私は、その死骸までも片づけなければならぬこともあった。それから芥川君や、葛西君も、したしい交遊があり、特色のある人びとであり、まだ将来芸術的に何かを期待されていたのに、惜しいことをしたものだ。岩野泡鳴君も、ちょいちょい、遊びにやって来た。君は私を苦手だといっておった。そしてときどき議論でもすると、すぐに耳が真赤になったことをもおぼえている。

 私の日記から、文壇人とのいろいろの交際のことを抽き出してかいて置けば、案外、何かの役に立つであろうことが少なくはないと思うが、今では、その気もなければ、その暇もない。また、大杉栄君や、福田徳三氏や、高畠素之君等、とても特長のある人びとに関してもその通りだ。

 次に、私の社からの出版物としては第一に円本の先駆をなした『現代日本文学全集』を挙げ、それから『アインシュタイン全集』、『経済学全集』、『マルクス・エ
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