□本居士
本田親二
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)祖父《じい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四十九日|経《た》って
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時代はよく解りませんが、僕の祖父《じい》の若い時ですから、七十年ばかり前でしょう。
大隅国加治木《おおすみのくにかじき》に長念寺《ちょうねんじ》という寺がある。其寺《そこ》に、或《ある》人が死んで葬《ほうむ》られた。生前の名は忘れました。四十九日|経《た》ってから家族が墓石を建てたんです。その墓石――高サ約二尺くらいの小さな墓――に、仏名《ぶつみょう》が彫ってある、慥《たし》か四字でした。上の字は忘れましたが、「□本居士《ほんこじ》」と彫ってあります。
その「本」とい字の下の十の横の一《ぼう》に朱《しゅ》が入れてあるのです。今|現《げん》にその朱が入っています。
その十の字の一画の、由来因縁になるお話ですが、始め、墓石を建てた時、その「本」と云う字が、石工の誤りで、「木」と云う字になっていたのです。
それを誰《たれ》も気が着《つ》かないで、そのまま建ててしまったのですね。
ところが、その墓石を建
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