らはすんでゐる
魚類のやうにむつまじくくらしてゐる
風はしめやかだ
たかいあの青空をわたる風だから
時時すういと突刺すやうにつばめ[#「つばめ」に傍点]なんどを飛ばせてよこす
そしてわたしらをびつくりさせる
わたしらはむつまじくくらしてゐる
わたしらは貧しく而もむつまじくくらしてゐる
わたしらは魚類のやうにくらしてゐる
感謝
なんといふはやいことだ
たつたいまおきたばかりのところへ
ステーシヨンから箱が一つ
どつさりととどいた
その箱は遠くからいくつもいくつも隧道《とんねる》をくぐつてきたのだ
黄金《こがね》色した大きな穀物畠を横斷し
威勢のいい急行列車に載せられてきたのだ
そして此の都會のわたしらまできたのだ
みると箱の裂目からなにかでてゐる
それは葱の新芽だ
それから馬鈴薯《じやがいも》と鞘豆と
紫蘇の葉の匂もそこら一ぱいに朝のよろこびを漂はせてゐる
勞働者の詩
ひさしぶりで雨がやんだ
雨あがりの空地《あきち》にでて木を鋸《ひ》きながらうたひだした
わかい木挽はいい聲を張りあげてほれぼれとうたひだした
何といふいい聲なんだ
あたり一めんにひつそりと
その聲に何もかも
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