もつたところを
ひもじさをじつと耐へて
感謝のあたまを低く垂れ
わたしらのやうにたれ
わたしの祈りをしづかにまつてゐるではないか

此の食卓に祝福あれ!

 ※[#ローマ数字9、1−13−29]


  そこの梢のてつぺんで一はの鶸がないてゐる

すつきりとした蒼天
その高いところ
そこの梢のてつぺんに一はの鶸《ひは》がないてゐる
昨日《きのふ》まで
骨のやうにつつぱつて
ぴゆぴゆ風を切つてゐた
そこの梢のてつぺんで一はの鶸がないてゐる
それがゆふべの糠雨で
すつかり梢もつやつやと
今朝《けさ》はひかり
煙のやうに伸びひろがつた
そこの梢のてつぺんで一はの鶸がないてゐる
それがどうしたと言ふのか
そんなことをゆつてゐたのでは飯が食へぬと
ひとびとはせはしい
ひとびとのくるしみ
くるしみは地上一めん
けれど高いところはさすがにしづかだ
そこの梢のてつぺんで一はの鶸がないてゐる

  雨は一粒一粒ものがたる

一日はとつぷりくれて
いまはよるである
晩餐《ゆふげ》ののちをながながと足を伸ばしてねころんでゐる
ながながと足を伸ばしてねころんでゐる自分に
雨は一粒一粒ものがたる
人間のかなしい
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