れてゐる
その水のきよらかさ
その水のきよらかさは
いもうとよ
それはそなたの愛のやうだ
ひとにかくしたくちつけにとけてながれるそなたの愛だ

  十字架

十字架のおもさは齒をたて
むごたらしくも肉體に喰入る
苦しむものの愛する十字架
苦しむものよ
にんげんこそまことのキリスト
そして道はながい
ゴルゴダへの此の道
どこまで行つたらつきるのか
肩の上の十字架
よろめく足を踏みしめて進み行く
くるしみをじつと耐へてすすみ行く
みそなはせ
主よ、人間のこの強さを……

  鞴祭の詩

自分の意志はあかあかと
みよ、うつくしくやけただれてゐる
鐵砧《かなしき》の上なる意志を
鋼鐵《はがね》のやうな此の意志を
打て!
鐵槌をふりかざせ
とびちるものは火花の吐息だ
とびちるものは自分の吐息だ
くるしい
くるしいから美しいのだ
生きのくるしみ
それが人間にこもつて力となるのか
世界の黎明《よあけ》よ
研ぎすました此の冴え
ふれれば切れるやうな空氣
鋼鐵のやうな自分の此の意志
それを鍛へる自分の力
くるしめ
くるしめ
鐵砧の上できたへろ
とんかんと
此のいい音響《おと》で冬めを祭れ

  鴉祭の詩
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