人間
汝の愛《いつく》しむもの
神神も照覽あれ
此の生きてゐる人間を

  姙婦を頌する詩

生みのくるしみ
此のくるしみのために
はらめるものよ
おんみはなにをかんずるか
おそろしい胎内のあらし

あらしを思へ
あらしを忍べ
はらめるものは人間である
永遠のはてから來るもの
太陽の愛《いつく》しむもの

生みのくるしみ
おんみのくるしみ
それが世界のよろこびだ
人間の一人が世界に殖えるところに
此のよろこび
此のよろこびを思へ

からりとはれた蒼空のやうな氣持で
やがておんみはみつけるのだ
あらしのわすれていつたものを
その膝の上に
その乳房を吸つてゐるのを
しばらくしのべ
あらしをしのべ
おんみは人間の創造者である
おんみらによつて人間は此の世界にきたる
萬物の讃美をうけよ
人間の母なるおんみ
人間をはらめるおんみ

生めよ
ふえよ
地にみてよ
勝利をあげて來れ、人間

  妹におくる

枯葉の下からぞつくりと青い芽をだしてゐるみづくさ
すんなりとのびてゐる木木
ひらひらしてゐるのはその木木の嫩葉だ
あたりにさへづる鶸やのじこ[#「のじこ」に傍点]
落窪からちろちろと雪解の水がなが
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