雨はからりとあがつて
さつぱりした青空にはめづらしい燕が飛んでゐた
荷車の詩
日向に一臺の荷車がある
だれもゐない
ひつそりとしてゐる
木には木の實がまつ青である
荷車はぐつたりとつかれてゐるのだ
そしてどんよりした低氣壓を感じてゐるのだ
路上には濃い紫の木木の影
その重苦しい影をなげだした荷車
歡樂の詩
ひまはりはぐるぐるめぐる
火のやうにぐるぐるめぐる
自分の目も一しよになつてぐるぐるめぐる
自分の目がぐるぐるめぐれば
いよいよはげしく
ひまはりはぐるぐるめぐる
ひまはりがぐるぐるめぐれば
自分の目はまつたく暈み
此の全世界がぐるぐるとめぐりはじめる
ああ!
海の詩
どんよりとした海の感情
砂山にひきあげられた船船
波間でひどく搖られてゐるのもある
はるか遠方の沖から
こちらをさしてむくむくともりあがり
押しよせてくる海の感情
何處《どこ》からくるか
この憂鬱な波のうねりは
そこのしれないふかさをもつて
此の大きな力はよ
ああ海は生きてゐる!
夜晝《よるひる》絶えず
渚にくだける此の波波のすばらしさ
そこにすむ漁夫等を思へ
ザボンの詩
おそろしい嵐の
前へ
次へ
全68ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山村 暮鳥 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング