に帽子をとれ
へとへとにつかれながら而も壯麗に生きてゐる大都市
此の中央大十字街
その感覺はくもの巣のやうな大路小路にひろがり
ひろいひろい郊外に露出して顫へ
其處で何でもかでも鋭敏に感じてゐる神經
どんなものでもひつ掴まうとしてゐる神經
その尖端のおそろしさよ
ポプラの詩
すんなりと正しくのび
うすいみどりの葉をつけた
高臺のポプラの木
その附近《あたり》から
みえる遠方はなつかしい
一本すんなり立つてゐても
五本六本列んでゐても
此の木ばかりはすつきりしてゐる
そよ風にこれがひらひらするのをみてゐると
わたしはたまらなくなる
ああ此の木のやうな心持
怖しい敏感なポプラ
冬のをはりにもう芽ぶき
秋には入るとすぐ落葉《おちば》する
ああポプラ
これこそ光線の愛する木だ
子どもらは此の木のしたで遊ばせろ
風の方向がかはつた
どこからともなく
とんできた一はのつばめ
燕は街の十字路を
直角にひらりと曲つた
するといままでふいてゐた
北風はぴつたりやんで
そしてこんどはそよそよと
どこかでゆれてゐる海草《うみくさ》の匂ひがかすかに一めんに
街街家家をひたした
ああ風の方向がす
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