もろ」に傍点]
麥の芽の青

またその色は藍で
金石のてざはり

ぶらさがつた女のあし
茶褐で雪の性

土龍《もぐら》の毛のさみしい銀鼠
黄の眩暈《めまひ》、ざんげの星

まふゆの空の飛行機
枯れ枝にとまつた眼つかち鴉。


  烙 印

あをぞらに
銀魚をはなち
にくしんに
薔薇を植ゑ。


  愛に就て

瞳《め》は金貨
足あと銀貨
そして霙ふり
涕《はなみづ》垂らして
物質の精神の冬はきたつけが
もういつてしまつた。


  青空に

青空に
魚ら泳げり。

わがためいきを
しみじみと
魚ら泳げり。

魚の鰭
ひかりを放ち

ここかしこ
さだめなく
あまた泳げり。

青空に
魚ら泳げり。

その魚ら
心をもてり。


  A[#「A」は accent grave(`)付き] FUTUR

まつてゐるのは誰。土のうへの芽の合奏の進行曲である。もがきくるしみ轉げ廻つてゐる太陽の浮かれもの、心の日向葵の音樂。永遠にうまれない畸形な胎兒のだんす[#「だんず」に傍点]、そのうごめく純白な無數のあしの影、わたしの肉體《からだ》は底のしれない孔だらけ……銀の長柄の投げ鎗で事實がよるの讚美をかい
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