小川芋銭
山村暮鳥
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)案外|論理的《ロジカル》に
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)案外|論理的《ロジカル》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]の
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物其のものはそれ自らに於てことごとく生命の一の象徴でなければならぬ。
また実にその象徴である。
いつかお目にかゝりたいと思つてからすでに久しいのである、芋銭氏はそんな事は夢にもごぞんじないであらう、それが事実となつた。
牛久駅に下車した時はもう何処の家にも灯は入つてゐた。自分は恋人に逢ひにでも行くやうな気分で沐浴し、喫餐し、折柄の糠雨を宿で借りた傘で避けながら闇の夜道をいそいだ。をしへられた火の見の下まできた。そこから折れて街道に別れるのであつた。薄暗いところに鐘楼があつて、鳴らす人もないやうな鐘がふらりとぶらさがつてゐる。そろそろ芋銭情調がはじまる。遠くにあたつてこんもりした森はあるが梟の声も聴かれない。こゝは畑
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