とおもふ
おなじく
ああ、もつたいなし
もつたいなし
森閑として
こぼれる松の葉
くもの巣にひつかかつた
その一つ二つよ
おなじく
ああ、もつたいなし
かうして生きてゐることの
松風よ
まひるの月よ
おなじく
ああ、もつたいなし
もつたいなし
蟋蟀《きりぎりす》よ
おまへまで
ねむらないで
この夜ふけを
わたしのために啼いてゐてくれるのか
おなじく
ああ、もつたいなし
もつたいなし
かうして
寢ながらにして
月をみるとは
おなじく
ああ、もつたいなし
もつたいなし
妻よ
びんばふだからこそ
こんないい月もみられる
月
ほつかりと
月がでた
丘の上をのつそりのつそり
だれだらう、あるいてゐるぞ
おなじく
脚《あし》もとも
あたまのうへも
遠い
遠い
月の夜ふけな
おなじく
一ところ明るいのは
ぼたんであらう
さうだ
ぼたんだ
星の月夜の
夜ふけだつたな
おなじく
靄深いから
とほいやうな
ちかいやうな
月明りだ
なんの木の花だらう
おなじく
竹林の
ふかい夜霧だ
遠い野茨のにほひもする
どこかに
あるからだら
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